ご相談に至る背景
PCレンタルサービス事業を展開するキッセイコムテック。主に「MICE」(Meeting、Incentive、Convention、Exhibition)と呼ばれる国際会議や展示会などのビジネスイベントに関わる顧客に、必要な台数のPCをすぐに使える状態にして貸し出しています。この事業を始めたのは1996年から。順調に成果と実績を積み重ねてきましたが、Windows10が登場した2015年頃からPCの高性能・多機能・大容量化や管理体制などを要因に、従来の方法ではレンタルPCの運用がいくつもの課題を抱えることに。そこでキッセイコムテックは新しい方法の模索を開始。MECMに対する専門知識の高さを見込んで、アーザスを課題解決のパートナーに選びました――。
デバイスの進化と共に大きくなった事業課題

PCレンタルサービス事業は、お客様が必要とする台数のPCを、すぐに使えるようにキッティング(セットアップ)して、利用される期間だけ提供します。国際会議や展示会など開催期間が終わるとPCは当社に返却され、次のお客様に向けて新たにキッティングし直して、またレンタルに出すのが基本的なサイクルです。お客様ごとに必要となるPCのシステムやソフトは異なるので、毎回、キッティングをし直します。そのためキッティングの作業効率は事業全体の回転スピードに直結するわけです。従来は、主にクローニングという手法を取っていました。
クローニングの方法

ご注文に類似した保存済みのイメージファイルをマスターPCに入れる

マスターPCをご注文に合わせて手動で修正する

修正後にイメージファイルを作成

ご注文の台数分のPCにイメージファイルを流し込みクローンPCを作成
この手法は年々、オペレーションの課題が大きくなる状態でした。例えば、クローニングではマスターPCでイメージファイルをつくり、それを元にクローンPCを作成してレンタルに出します。一度つくったイメージファイルは保存しておき、類似案件が出た時に引っ張り出して、オーダーに沿った新しいイメージファイルをつくるのに活用します。年々、PCが多機能でハイスペック、大容量になるにつれ、イメージファイルは数GBという大きなデータに膨れ上がりました。レンタル用途に合わせて毎日、何十種類ものイメージファイルをつくる必要があり、最終的に当社ではネットワークに接続した30TBものストレージデバイスを用意。それでも古いイメージを削除しながら運用する状態でした。容量の問題だけではなく、キッティングの作業が多種多様化して時間が掛かるようになりスピード感という点も課題に。「急遽PCがほしい」「故障したから替えがほしい」という当日レンタルのご要望にも応える必要があり、迅速に作業が行えて納期を確実に守る環境を再構築しなければいけなかったのです。
従来方法での主な課題

イメージファイルの巨大化

保存サーバーのストレージ容量不足

多種多様化が進む
キッティング作業の負担

シビアな納期と
キッティング作業のスピード感
MECMの特殊な活用法を専門家としてアーザスがサポート

実は同じ頃、一足先にクローニングとは異なる方法での運用を試みている同業他社がありました。その企業が取り掛かっていたのがMECMを活用してキッティングを行う方法です。我々も独自に導入を試みましたが、「できることはできる」という甘い状態で足踏みしていました。そこでMECMに詳しい相談相手を、主にインターネットで調べて探し始めたのです。MECMの導入支援を謳うIT系の企業数社から見積もりを取り、各社とミーティングを行いました。その内の一社がアーザスさんです。実はMECMに対応している企業は非常に少なく、「我々の方がMECMに詳しいのではないか・・・」と要領を得ない企業もありました。想像以上にニッチな専門領域なのだと少々驚く中、アーザスさんは「我々の言っている内容をきちんと理解している」という感触がありました。また、アーザスさんがさまざまな大手企業の裏方としてMECMの導入から保守運用に関わっていることを知り、信頼できると判断してパートナーに選んだのです。
キッセイコムテック様のご要望である「MECMを使ってキッティングだけをしたい」という活用方法は、当社にとって前例のない発想でした。通常、MECMはデバイス全般の管理システムであり、キッティングはその一部に過ぎません。それでいて「短期間で頻繁にPCの中身を入れ替える」という、キッティング作業を含む素早いオペレーションを確実に実現するシステムが必要となります。アーザスは検討を重ねて、3つを軸にこのプロジェクトを進めることにしました。まず一つ目は、MECMの主要機能であるタスクシーケンスを活用したキッティングの自動化と効率化です。簡単に説明すると、従来のキッセイコムテック様は毎回、オリジナルのマスターPC(イメージファイル)を手作りしていたと表現できます。一方、MECMのタスクシーケンスを活用すれば、ご注文に合わせて各タスクを有効・無効を設定するだけで、素のOSイメージからさまざまなバリエーションのマスターを自動で組み上げられるようになります。これにより、作業の簡素化・迅速化、イメージファイルの保存省略などが確保できます。
タスクシーケンスによる
キッティングの自動化と効率化

手作業でオリジナルのマスター作成

MECMのタスク選択で作成
メリット
- 設定を変えてマスターを制作するので作業が簡略化
- キッティング作業の初動が劇的にスピーディに
- 設定対応なのでイメージファイルの保存が不要に
2つ目の軸は、データを複製するポイントや管理する場所でのメインとサブの2台体制を用いた冗長化の徹底です。キッセイコムテック様のPCレンタル事業においては、キッティング作業の迅速性と確実性が求められます。それを念頭に、メインのPCやサーバーに障害が起きても、業務が停止しないように設計しました。3つ目の軸は、ストレージ不足の解消とデータ置き場の一元管理です。タスクシーケンスの利用でイメージファイルが不要になり、キッセイコムテック様が用いていた30TBのストレージデバイスに余裕が生まれました。そこでこのストレージデバイスを利用して、一連の作業で必要となるデータ群を一元管理できるよう再配置したのです。これにより、各工程ごとに起こっていたストレージ不足も解消できました。
山下さんは約3か月にわたり当社に常駐して、システムを組み上げてくれました。また、その間に当社の担当社員へ運用方法を共有するだけでなく、MECMに関する情報や知識もレクチャーしてくれました。今回は、アーザスさんにとっても初めてとなる導入事例であったわけですが、当社の事業をよく把握していただいた上で、柔軟に課題解決を進めてくれたと評価しています。先に説明のあった各ポイントでの冗長化の設計などは、アーザスさんからの提案です。他にも、事業円滑化に向けていくつものアイデアを具現化してくれています。
最も印象的だったのは、どうしてもローカルドライブが必要だった工程で、ネットワーク上のストレージデバイスにWindowsの仮想ドライブを作成して解決したこと。このようないくつものアイデアで、我々のPCレンタル事業の工程をケアしてくれた結果、想定以上の成果を得ることができました。
従来方法での主な課題

キッティング作業の自動化と効率化

安定性とトラブルの減少

新しい知識の習得

コスト削減
顧客に提示する納期が大幅短縮!
社内ITインフラ改革の伴走者として期待
今回のMECMの導入成功もあり、当社ではPCレンタル事業の規模拡大を進めています。レンタルに出すためのPC台数を増やす予定で、PC展開速度のさらなる向上が目下の課題です。MECMはもちろん、ネットワークやサーバーインフラの強化なども含めて、さまざまな角度からアドバイスを頂きたいと考えています。また、PC管理だけではなく当社が将来的に検討しているスモールオフィス向けのネットワーク構築といった、新規事業領域でのITインフラについても助言やサポートを期待しています。
キッセイコムテック様での挑戦的な経験は、当社でもMECMのサポート能力の強化につながりました。より広範な企業の問い合わせにも対応できるようになるきっかけになった事案であり、今後の新しい事業展開に生かしていきたいと考えています。